7.09.2009

Theo Jansen@RTM

ロッテルダムから電車で20分ほどで、デン・ハーグ市に着く。そこからさらにトラムに乗り継いで終点まで行き、5分ほど歩けば北海が広がる海岸線に出る。

オランダといえばチューリップや風車が有名でビーチというイメージはあまり湧かないかもしれないが、海岸線の距離は約1800kmもありその大部分が砂浜である。デン・ハーグの都市自体ももともと砂丘の上に作られた都市だし、ヨーロッパで一番幅の広いビーチというのもここオランダに存在する。

海水の温度は冷たく、真夏でもウェットスーツなしで長時間泳ぐのは厳しい。今回も海岸まで出向いたのは海水浴のためではない。Theo Jansenというオランダ人アーティストのインスタレーションが見れるということで、友人と行ってきた。BMWのコマーシャルにも適用されたこの人の作品は風力によって歩く彫刻たち。ストローを太くしたようなプラスチックのチューブを組み合わせて作る彼の動物たち(Animarisと呼んでいる)はまるで生きているかのように自由に浜辺を動き回る。広大な浜辺と強い風が吹くオランダの海岸線にとても調和した作品で、遥か昔からこの地に生息している生き物のような錯覚さえするものの、残念ながら今回は風がまったく吹かなかった。動くのを拒む動物たちの背中を一生懸命押しながらメカニズムの説明をしてくれたテオおじさんが印象的。

オランダは海面以下の土地から水を海に汲み出すため、歴史上長い間風車を利用したことで有名だが、現在は風力発電にもかなり力を注いでいる。風と共に生きてきたオランダ人にとって、このテオ氏の動物たちはまさにそんな歴史を象徴する貴重な存在であり、今後ますます好かれていくのだろうなと思った。近い将来オランダの海岸線には何頭もの彼の作品が生息し、それぞれ自由奔放に歩き回っているような日が来るのかもしれない。

1 件のコメント:

  1. リンクにあったyoutubeの映像を見た。
    すごいね。風による機構のダイナミズムを表現しているものなのだけれどとても静的な感じがした。
    少しものを動かしたり、なんでもないところから引き出したりして活用可能なエネルギーに変換する技術革新の流れをすぱんと飲み込めた映像でした。
    司馬遼太郎の作品の中で「機械とは回転だね」というような示唆に富んだ言葉があるのだけれど、エネルギーを動きに変換するときに回転を経ない方法はあるのだろうかと考えている。回転はやはり音がすると、静かに物を動かしたりすることを暑い夜に扇風機を眺めながら考えている。

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