7.29.2009

サンバ祭り@RTM


世界中のあらゆる都市に、必ずと言ってよいほどチャイナタウンが存在するように、ブラジル・サンバ祭りもまた世界のあらゆる都市になぜか存在するもののひとつではないだろうか。日本では浅草サンバ祭りが特に有名だが、ここロッテルダムにもなぜかもれなくブラジル・サンバ祭り(通称カーニバル)が存在している。

毎年7月に行われるのだが、大抵の場合この工業都市は真夏でも肌寒く、半ば全裸に近いダンサーたちが何時間もかけて町中を踊り抜けていくのを、毎回気の毒な気持ちで見守ってしまう。が、今年は例年より温かい。そのせいもあってか今年のカーニバルは過去4年間の中では一番盛り上がっていたように思う。

町の中心には日頃そんなに人が多いわけではないのに、この日に限っては中心地は人ごみでごった返す。すべてのトラムが運行を停止し、町の中心部の道路はすべて歩行者天国となる。いったいこの都市のサンバに対する情熱はどこからくるのだろうか、と疑問に思ってしまう。さすがにオランダに来て5度目となると、わざわざ見に行く気もおこらないのだが、幸か不幸かカーニバルが家の前の通りまでやってくる。部屋の窓からは見えないのだが、中にいると音楽と太鼓の音だけが響いてうるさいので、仕方なく外に出て果てしなくつづく奇怪にくねる腰の群れを見ることにした。


ロッテルダムは、日本の学校の授業にも出てくるヨーロッパで一番大きな港がある都市である。そう聞くとあたかも都市自体が大きくて栄えている気がしてしまうが、惑わされてはいけない。実際の港(ユーロポート)はロッテルダム市の中心部からかなり離れた場所にあり、町の中心といえる場所は驚くほど小さい。冴えない商店アーケードがあり(とは言っても世界最初の歩行者天国商店街と称されているが)、映画館があり、飲み屋がたくさんある、まるで日本の地方都市を連想させる。

そう考えると、このサンバ祭りの意味もそれに対する町の情熱も、多少なりとも理解できるようになる。つまり、ロッテルダムは日本各地の地方都市のように、オランダ国内およびヨーロッパ各地から観光客を呼ぶのに必死なのだ。特にこれといったアトラクションも歴史的重要なモニュメントもないこの町は、週末のたびにあらゆるイベントを主催しては、市民を楽しませ、外から人を呼び集めている。

ここにざっと思い出しただけでも、国際映画際、カメラジャパン邦画祭り、F1路上エキシビションレース、サンバ祭り、トランス/テクノダンス祭り、北海ジャズ祭り、ヨーロッパスケートボード大会、建築ビエンナーレ、クラブミュージッック祭り、クリスマスパレードなどなど、とにかくイベントが多い。その度に町はその機能を放棄し、お祭りに従事する。口調がシニカルに聞こえるかもしれないが、個人的にはすごく好感をもっていて、この都市の例は日本の地方都市においても実行可能な、町おこしの手本になるのではないかと思っている。

最後にもうひとつ、このようなイベントの数々をこなす上で重要なのは、行政の理解力とフレキシビリティ、そしてなににも増して大切なのが徹底したゴミの処理である。お祭りのたびに街全体がゴミに埋め尽くされるのだが、必ず翌朝には跡形もなくきれいに片付いている。お祭り中の市民は細かいことを気にせずに楽しむことに専念し、行政はその陰でしっかりと後片付けの段取りを決めている。日本人ならば、初めからゴミを散らかさない工夫ないしは注意を呼びかければいいのに、と思う人が大多数だろう。みんなの場所だから市民一人一人がゴミを捨てないようにする、という日本に対して、こっちは公共な場所なんだから汚しても行政が片付ける義務がある、というスタンスなのだろうか。さすが高い税金を支払っているだけのことはある、と思いながらも、ふとまた公共/パブリックという概念について考えさせられた週末でした。



7.14.2009

あついよ@TKY

今日関東甲信越地方が梅雨明けをした。東京はとにかく連日暑い。日中は30度を超えている。スーツを着て出るときは一応上着を持つのだけれど羽織ることはほとんどない。六本木ヒルズ、渋谷パルコ前や東京大神宮などストリートファーニチャーとして空気中に霧をずっと吹く設備が設置されているところがある。空気への打ち水のようなものだ。この設備をある施設への導入を検討していたこともあり打ち合わせを重ねていた。あたりを(真下にいる人も)濡らさずに温度を2,3度下げる効果があるという。水を微細な霧状に噴射し蒸発するときの気化熱で周辺の熱を奪い、局所的に空調するというものだが、自然のものなのでその時の気温・湿度の影響を大きく受ける。周辺の湿度をすぐに上げてしまうということもあって、外部限定で室内での空調には向かない。一人暮らしで自分ひとりのためにクーラーをつけることは少しためらわれるということもあって室内で少し気温を下げる方策(室内床に打ち水以外の)を考えている。あついよ。

梅雨が明けたというのに、梅雨入り時期の話題であるが今年も梅酒を漬けた。今年は黒糖梅酒。出身地である神奈川県小田原産の梅を何軒もスーパーを回って探してきた。昨年に漬けた梅酒はまだ飲みきっていないのでよく居酒屋にあるような古酒にしたいと思っている。難しいかもしれない。

7.11.2009

関空@TKY

友人の結婚式で大阪に行った。東京から大阪に行くのには本数やアクセスの面から新幹線が便利なのだけれど、関西国際空港(レンゾ・ピアノ設計)を訪れるために往路だけ飛行機を利用した。到着の空港でしかも日帰りの予定だったので荷物を預けることもなく、平面計画の明快さを感じるもなく、ぱっと出た。構造も屋根の表現はシンプルだった。内部の空気の動きの制御を空間の形と空調設備でしている。流線形の天井をなぞって空気が動いている。できるだけ自然に空気を動かして快適な環境を獲得している建築にいま興味がある。中部国際空港も行ってみたいがまず名古屋に行く予定がない。

空港はたくさんあるが、なぜか雰囲気がどこも似ている。建設地が都市の居住空間から離れ都市の文脈から必然的に切り離されるということ、機能上飛行機が発着する広い場所が必要で飛行機の待機場所にアクセスするために長い平面となり見通すために間仕切りなどのないながい大スパンの空間となること・ボリュームを層的に積み上げることが難しく平面的にぺったりすること、移動距離・時間の短縮、利用客の待ち時間の短縮など機能上の要求が厳しく合理性を追求した意匠・構造・設備となることなどからだろうか。一方で空港から一歩外に出るとガツンとファーストカルチャーショックを感じるということが多々あった。特にチベットのラサ空港では草一本生えてない荒野のど真ん中にありこの中で人はどう暮らしているのだろうかとさすがに思ってしまった。

知り合いの建築家T氏が自分の建築家としてのゴールを美術館と飛行場の設計と設定していた。

7.10.2009

ほおずき市@TKY

7/10は浅草寺にてほおずき市が催される。ほおずきは薬草として重宝されたようで風鈴と合わせて夏の厄落としという由来。7/10は功徳日にあたり46000日分の参拝に匹敵するという。ほおずきの縁日が並び大変な賑わいだった。46000日は一年365日で126年分。江戸時代の平均寿命を40年とすると親子3代の祈願ということになるのだろうか。

7.09.2009

Theo Jansen@RTM

ロッテルダムから電車で20分ほどで、デン・ハーグ市に着く。そこからさらにトラムに乗り継いで終点まで行き、5分ほど歩けば北海が広がる海岸線に出る。

オランダといえばチューリップや風車が有名でビーチというイメージはあまり湧かないかもしれないが、海岸線の距離は約1800kmもありその大部分が砂浜である。デン・ハーグの都市自体ももともと砂丘の上に作られた都市だし、ヨーロッパで一番幅の広いビーチというのもここオランダに存在する。

海水の温度は冷たく、真夏でもウェットスーツなしで長時間泳ぐのは厳しい。今回も海岸まで出向いたのは海水浴のためではない。Theo Jansenというオランダ人アーティストのインスタレーションが見れるということで、友人と行ってきた。BMWのコマーシャルにも適用されたこの人の作品は風力によって歩く彫刻たち。ストローを太くしたようなプラスチックのチューブを組み合わせて作る彼の動物たち(Animarisと呼んでいる)はまるで生きているかのように自由に浜辺を動き回る。広大な浜辺と強い風が吹くオランダの海岸線にとても調和した作品で、遥か昔からこの地に生息している生き物のような錯覚さえするものの、残念ながら今回は風がまったく吹かなかった。動くのを拒む動物たちの背中を一生懸命押しながらメカニズムの説明をしてくれたテオおじさんが印象的。

オランダは海面以下の土地から水を海に汲み出すため、歴史上長い間風車を利用したことで有名だが、現在は風力発電にもかなり力を注いでいる。風と共に生きてきたオランダ人にとって、このテオ氏の動物たちはまさにそんな歴史を象徴する貴重な存在であり、今後ますます好かれていくのだろうなと思った。近い将来オランダの海岸線には何頭もの彼の作品が生息し、それぞれ自由奔放に歩き回っているような日が来るのかもしれない。

7.07.2009

サマーフェスタ@RTM

やはり異常気象のせいなのか、例年に比べて今年のオランダの夏はとても夏らしい暑い日が続いている。一年を通して3日に1日は雨で、雨が降らなくてもだいたい曇っているのが通常なオランダで、連日晴天というのはすごく珍しいことだと思う。天気が良いと、ここまで町も人も美しく変化するものか、と感心してしまうくらいガラリと周辺の雰囲気が変わり、自然と気分もよくなる。

そんなわけで、室内に隠っているのはもったいないので、週末は公園でバーベキューをしたり野外コンサートを聞きにいったりと、外で過ごす時間を満喫している。写真はメトロポリス•フェスティバルというロッテルダムのサマーイベントにて。日本のサマーソニックをだいぶ小さくしたようなイベントで、知らないバンドがたくさん演奏していた。唯一、日本のどんなイベントでもおそらくあり得ない光景が、そこらじゅうからあがる大麻の煙と芝生の上に散らかされたゴミの量だ。あまりにも広大な敷地に平均的に散乱していたので、思わず綺麗に見えてきてしまうくらい。これも晴天の効果なのだろうか。。